俺とおしゃべりなあいつの話
千冬視点の過去話
「松野くん、友人を救う為に命って投げ売れる?」
あいつが急にそんなことを聞いてきた、
俺は『そんなのあたりまえだろ!』とか言ってみたいと思ったが
あいつの暗い表情が本当に誰か死んじまったのかと思うほどで…
「無理だろ、それは」そう答えた。
「だよね、私も無理だ、そんな事出来る人聖人君子かな?って」
こいつはいきなり小難しいことを言ってくる、時々訳わかんねえ事を言っているが多分真面目に考えてるんだろうな
ちゃんは小学生の頃からの知り合いだ、ダチっていうにはちょっと違うかもしれねえけどまあ仲の良い方だとは思う、
あいつは学校では先生やクラスの奴らに慕われているくせにちっとも嬉しそうじゃなかった。
それどころか都合によっては人を選んでいるような時もあった、皆、ちゃんを頼っていたからか批判するような奴もいなかったけど、正直俺的にはあんまり好きじゃ無かった、なんで皆こいつに頼るのか。
でもある日、子猫をいじめている高学年の男子たちをちゃんがじっと見つめていた、
「あぁ?何見てんだよ」
「......ごめんなさい」
あいつは悔しそうな顔をして諦めていた。
「ちゃん、あいつらお前のダチか?」
「......違うにきまってるじゃん」
「これ持っとけ」
ランドセルをちゃんに渡して俺はあいつらを目掛けて殴った。
「いでっお前誰だよ?!」
「松野千冬だ、覚えとけ」
俺はそいつらを倒した。
「......っち、なんだよ、一人殴ったら逃げるとかダセェー」
「......ありがとう、千冬」
感謝を述べていたが難しい顔をしていた。
「なんだよ嬉しくねぇのかよ」
殴るのは危ないよ、だとか注意されるのはごめんだ。
「......いや、後からこの人達が千冬に殴られたって先生に言った時の弁明を考えてた」
「なんだそれ」
俺は笑ってしまった、
俺はちゃんのことを冷たい人間だと思っていたがきっとこいつは馬鹿だけど真っ直ぐなんだ
「ちゃん分かりにくいって言われねえか?」
「そんなことないよ」
即答された、なんか腹立つな、
でもこの日からちゃんとは割と話すようになった、主に俺の喧嘩話をちゃんはうんうん聞いてるだけだが、
あいつは問題児の俺の事を咎めたりもしないから居心地がよかった、それから俺らは中学生になった。
そして俺は場地さんと出会い本当に尊敬できる人を見つけた、俺はこの喜びをちゃんに教えたくなった、お前が俺と同じで人が嫌いなことも、その実、正義感のある奴だってことも知っている。
だから、きっと場地さんに会ったらお前だって何か変わるんじゃないかってそんな自分勝手な期待が俺にはあった。
「松野くん?考え事?」
「千冬が考え事とかぜってぇろくでもねーだろ」
ちゃんと場地さんが話しかけてきた。
「別に、昔の事思い出してただけッス」
「なにそれ」
ちゃんが笑う、
こんな風に笑ってくれるようになったのは最近だったりする、やっぱりそれは場地さんのおかげだと思う。
場地さんは凄え人だ、この人に会えただけでもう十分すぎるくらい幸せだと思う。
でも俺は場地さんのあの手紙の相手とか引っかかることはある。俺は深く考えることは苦手だ、だけどちゃんが
「場地くんの事色々考えちゃうんだよねえ」
なんて言ってきた、あいつは小難しいことを言ってくるし、何を思っているんだろうか、それともただ単に好きになっているだけなのか、どちらにせよちゃんと場地さんは案外いいんじゃないかって思っている。
こんなこと言ったら二人とも照れて怒るかもしんねーけどさ。