おしゃべりなあの子の話
夢主視点の過去話
私が未来視と認識できる様になったのは小学校四年生の時、クラスの男の子と肩がぶつかりその男の子の腕から血を流す映像が私の頭を駆け巡る。
すると翌日彼は友人と遊んでいたとき不注意で窓ガラスを勢いよく割ってしまい腕が血まみれになっていた。
私はあの映像が未来を予想していたのかもしれないと考えた、それからは未来が見えた時は伝えるように努力したが奇妙な目を向けられる事が分かった。
「どうしたの?」
私が黙り込んでいたからか赤音ちゃんが心配してくれた
「ううん、なんでもないの」
赤音ちゃんは年上のお姉さんだ、図書館で上の本棚からものを取ろうと必死になっているところを助けてくれたのだ、それから会えば気さくに話してくれる、
「なにかあったら頼っていいのよ」
そう言いながら私の頭を撫でてくれた、同時に家が燃える映像と苦しんでいる彼女の映像がいつもよりはっきりと視えた、映像の鮮明さからきっと今日かもしれないでもその保証もない。
「あっあの、わたし」
どうしよう、どうしよう、どうしたら助けられるんだろう?! 頭の中で色々な考えがぐるぐる回る。
「大丈夫だからゆっくり話してごらん」
赤音ちゃんは優しい顔で微笑んでくれた、その瞬間に涙が出てきた、でも本当のことは言えなかったこんな事言ってしまったらまた変な目で見られてしまう、
「赤音ちゃん今日私の家でお泊り会したい…」
「いいわよ!」
そうして赤音ちゃんとその日お泊まりをした、その日の夜、赤音ちゃんのおうちが燃えたと両親に言われ私達は急いでその場に向かった
「お父さん、お母さん!青宗は!?」
赤音ちゃんには弟さんがいた、
私は赤音ちゃんを助ける事ばかり考えて弟さんの事を無視していた、もうダメだと思ったその時、1人の男の子が人を抱えて出て来た。
「青宗!!」
赤音さんが駆け寄る、弟さんは咳き込んでいたが無事だったようだ、
私はこの人を見捨ててしまったんだ…そう思うと震えが止まらなかった
「一くん、ありがとう!ちゃんも!」その男の子と私は赤音ちゃんに抱きしめられながら大泣きした。
******
それから未来視が見えたときは自分の行動が絶対間違えないように、と思うようになった。別に善人の様な心で言ってるわけじゃない、私のせいで、という思いに駆られるのが耐えられないだけの弱い人間なのだ。
しかし小学生の世界はあまりにも狭く感じた。誰のことが好きとか嫌いとか、そういうものばかりが私の視界に映った、それでも悪い事が起こらない様に先回りして行動したり、危険な事をしようとしてる子には顔色を伺いながら説得した、おかげでクラスの子や先生にまで感謝されたのになんだかそれがすごく……
「....疲れた」
私には無理だ、これからはできるだけ人を選んで過ごそう、私が人を助けれる範囲なんてたかが知れている、大きなことを出来るような存在じゃなかった、何で神様は私に未来視なんてできるようにしたんだろう、もっと強くて優しい人を選んだらよかったのに、そんなことを考えているうちに中学生になった、
「よ、ちゃん!」「ああ、松野くん」
松野くんは小学生の時からの顔馴染みで今も同じクラスだ、昔から喧嘩っ早い問題児だった、それでも彼なりの正義感があるみたいで私はいつもそんな彼をうらやましく感じていた、
「松野くん、ここの図書室に用事なんてあるの?」
「それがさー聞いてくれよ!めちゃくちゃかっけえ人に会ったんだ!俺!!」
松野くんがキラキラとした目で私に話しかけた
「...松野くん、今まで誰のことも尊敬してなかったのにいきなりどうしたの?」
「いや、なんかマジで漫画みたいな人でさ!眼鏡かけて冴えねえやつかと思ったら、俺が囲まれてピンチの時に颯爽と現れて助けてくれたんだ!」
「へぇ、それはすごいね」
私もそんな出会いをしてみたかったな、と思いながら相槌を打つ
「それでな!眼鏡を外して髪をほどくとめちゃくちゃかっけえの!」
「…漫画みたいだね」
私は彼の話を半分聞き流しながら適当に返事をしていた
「あっそうだ!今度一緒に会いに行こうぜ!紹介すんよ!」
「うーんまたいつかね」
だって面倒くさいし、結局不良じゃん関わるだけ損だ、
「そっか、まあいいわ!またここ来るからよろしくな!」
そう言い残して松野くんは去っていった、
「……いいなあ」
私は松野くんの後ろ姿に向かって呟いた
私の知っている松野千冬という男はこんな奴じゃない、今まで先生には敬語を使わないし、誰に対しても上から目線だった、そんな彼を変えてしまう人がいたんだな。
それから松野君はたびたび私が図書室の当番の時についてきた、まあ彼が場地さんを待つまでの暇つぶし相手なんだけど、
「なんか松野くんの話聞いてたらその場地さんって人に詳しくなってきた気がする…」
「まじで!?まだ半分も話してねえのに」
まだ半分だったのか…
「すっげえ仲間思いで優しい人なんだよなあ」
…優しい?優しそうに見える人ならいくらでもいる
扉が開く音がした、その先には黒髪長髪の人がいた
「松野くんの言ってた尊敬できる場地さん?」
「おう!場地さんまじですげえから!」
「お前何俺の話してるんだよ」
「初めまして、と言います」
「おうよろしく」
かっこいいけど怖そう、それが私が彼を見た最初の印象だ
「松野くんがここを待ち合わせの暇潰しにしてくれたおかげで私も会話する相手がいて楽しいんですよねー」
適当に話して適当に終わらそう、そう思っていたのに
「そういや前借りてた本返すわ」
すっかり返却期限切れになった図鑑を場地くんは持っていた、
動物図鑑なんて意外だな
「へえ動物図鑑!動物好きなんですか?」
「まあな」
図鑑を返却しようとした場地君の手が少し触れた、その瞬間私の頭の中にぐにゃりと砂嵐交じりの映像が流れ込んだ…
……なにこれ?なんで場地くんが自分でナイフを刺してるの…?
「おいどうしたよ」
「えっと、ちょっと保健室行ってきます」
私は頭が混乱してすぐ廊下へ出た、
すごい頭がクラクラする、こんな未来視初めてだ、怖い、どうして?誰かを庇っているの?なにこれ分からないことだらけだ…
「おい、?大丈夫か?」
場地君は私の腕を掴み心配してくれた、ごめんね、私こんな未来を勝手に見ちゃって...
「場地くん……大丈夫だから」
そういって涙をこらえ保健室に向かった、保健の先生は私を見て驚いていた、だっていきなり大号泣してる生徒がいるんだから、
「すいません、目にゴミが入って…」
ぐずぐずの私は下手くそな嘘をつき涙を拭いて帰宅した。
「ただいま」
「おかえり」
母親への挨拶もそぞろに急いで階段を駆け上がり私はベッドの上に寝転び目を閉じた、そして再びあの時の記憶が蘇った、彼は誰かの腕の中で死んでいく…彼はどこか満足そうだ、そんなことがあっていいのだろうか?
「うっ、どうしてあの人は…あんなになるまで一人なの?……」
もう嫌だ、なんで死ななきゃいけないの?なんで誰も彼を救えないの? 声を押し殺し泣き続けた、
翌日いつものように学校へ向かった。
一旦冷静にならないと、私が彼を救える可能性なんてあるのだろうか?だってあの場面は不良たちの抗争だ、そんなものに私が勝てるわけない、でも、本当に彼はそれでいいの?それが正解だとは思えない。
「おい、昨日、どうしたんだよ」
松野君が心配して声をかけてくれた、
「いやあ、ちょっと貧血?みたいな、もう大丈夫だから」
目が腫れているのを隠せれているのか不安だ、
「ふーん」
松野君は納得していない顔をしていた、
「場地さんも心配してたんだからな」
「あ、そうだよね、ごめん」
「まあ、元気ならそれでいいけど」
昼休み、私は図書室へ向かう、第二図書室の受付なんて別にあっても無くてもいいような存在だがここの静かな雰囲気が私はお気に入りだ
「いるかー?」
「場地くん??」
昨日のことがあってからだからすごく緊張する、
「いや、昨日体調悪そうだったから気になって」
そのためにわざわざ来てくれたのか、優しいなこの人
「えー気にしなくて良いのに、この通り健康だよー」
何もなかったかのように、そうしないとまた私は泣いてしまいそうになる。だって私じゃ彼の未来は変えられない
そんなことを考えていたら場地君はなぜか私の受付カウンターの椅子の前に座った。
「場地くん?どうしたの?」
「あぁ?千冬じゃなくて俺がお前の話し相手じゃ不服かよ」
…私は彼の未来を変えれないからと諦めていたのに。
「場地くん私とお話ししてくれるの?」
きっと面倒見のいい人なのだろう、私の事を心配してくれているんだな、なんだか嬉しい。
この人がどうしてあの未来なの?そんな思考回路が私の頭を駆け巡る
それから私達は色々話した、場地君の武勇伝や松野君との話、東卍の人達の話
場地君と話するのはとても楽しかった。
私は出来る事を放棄しようとしていた、諦める所だった、何故彼がナイフを自身で刺すに至るまで理解して解決できるようにしたい、だから場地くんをもっと知りたい、話したい。
彼の未来を見てしまったんだ、あんな場面もう見たくないが彼の内面を勝手に見たような感覚だった、ズルをしてしまった、彼の綺麗で強い心を私は勝手に盗み見たのだ、だから私にあなたを守らせてほしい。
その為に私の未来視はあるんだと思うことにした。