ホワイトデーの話
場地さん視点
今までのオレだったらバレンタインにチョコをもらっていようがお返しをするなんて頭なんて無く過ごしてきた。だが今回は違う。
がオレのためにチョコを用意してくれたんだから、オレもにお返しをすべきだろう。
ってどういうものが好きなんだ?そもそも食べ物の好みってあるのか? あいつなんでも喜んで食べてるイメージしかねぇし、正直何を渡せばいいのか全く分からねー。
の好きなもの……の好きなもの……。
結局考えても答えは出ねえからクッキーというよくあるブナンな選択をしてしまった。
そして3月14日。
朝早くに登校中のを見つける。
肩をトンっと叩くが振り返り、オレだと分かると笑顔で
「場地くん、おはよう」と挨拶してきた。
「おう、おはよう。これ」
オレの渡した小さな紙袋を不思議そうに見る。
「ホワイトデーだから」
と伝えるとは驚いた顔をする。
「場地くんが!?私に??」
明らかに信じられないという表情をする。
「チョコ貰ったんだからお返しするってのは当たり前だろ?」
当たり前なんて言ったが本当はじゃなきゃしようなんて思わねーけど。
「場地くんがこんなかわいいクッキー買ったんだあ。へぇ~ありがとう」
はわざとらしい言い方をしながら中身を確認する。
「ちょっとバカにしてんだろ」
と聞くとふふっと目を細め柔らかく笑う。
「そんなことないよ。ただかわいい形のクッキーだし結構買うの悩んだりしてくれたのかなぁと思うと嬉しくなっただけ」
たしかに色んな動物型のクッキーが入ってる。
そういやは犬を飼ってるって言ってたなとか中庭で猫と遊んでたなとか、そんな事を思い出しながら選んだ。
「んな事ねぇよ」
つい顔をそらしてしまった。なんつーかの反応はいちいち心臓に悪い…。
「大切に食べるね」
と言ってはクッキーを鞄にしまった。
これで何とかこのイベントは終わったと思っていたのだが……。
「ねえねえホワイトデーのお返しっていみがあるんだって~!」
「えーなにそれ!」
「クッキーは『お友達でいましょう』の意味らしいよ」
「うっそ、クッキー渡されたんだけど~最悪~」
と雑誌を広げて話すクラスの女子たち。
ホワイトデーのお返しには意味があるという記事を読んでいたみたいだ。
……クッキーはダメだと!? いや、と俺は多分”友達”という関係性で間違いねえけど。
…………でもなんか嫌だ。
盛り上がっている女子に話しかけ雑誌に書かれているお菓子の意味を尋ねる。事情を話すと周りの女子たちは楽し気にきゃあきゃあと盛り上がってしまったが……背に腹はなんとやらだ。
***
「場地くんどうしたの?もう帰ってるのかと……」
放課後図書室まで行き図書委員の仕事をしているに会う。
相変わらずここの教室は人が少ねえから他の奴らの目なんか気にすることなく話しかける。
「ほらこれやる、手ぇ出せ」
「え、うん?」
俺はポケットからの両手いっぱい分のチュッパチャップスを渡した。
雑誌の情報を得てから急いで昼休みに学校を抜け出して買った物だ。
「え、今朝クッキー貰ったのにどうして?」
「追加だ、特に意味なんかねーよ」
「本当に?なんか意味あるんじゃないの?」
は俺から貰ったチュッパチャップスを両手に握りしめ、むーっと疑うような目でオレを見る。
「ねーよ、バカ」と言ってオレはの頭をくしゃっと軽く撫でる。
は「ふーん」と少し考えるような素振りを見せた、そういやこいつ妙に察しがよかったな……。
「まあ、お返し二つ貰えるのは嬉しいし……ありがとうね」
大量のチュッパチャップスを花束みたいに大事に両手で持っているの姿がなんだか目に焼き付いた。
プレゼントの意味なんてどっちでもいーような事にいちいち気にしちまった俺は結構こいつにやられてんだな。
補足 飴はあなたが好きという意味。