おまつりを君と一緒に


後半は場地くん視点

「えっと…たこ焼き2パックの注文ですね?」
「おう、つーか、他に何か言う事ねえのか?」

 がやがやと賑わっているお祭り会場で私は屋台でたこ焼きを売っていた、たこ焼きの入ったパックを持っている。その反対側にお客様…もとい場地圭介くんが仁王立ちでいた。

「久しぶり……だね?」
「ちげえよ!お前、祭りいかねえって言ってたくせに居るじゃねえか!しかも屋台側かよ!」
「それは、その……」

 そう、私は夏休みが入る前に場地くんにお祭りに行くのか行かないのかなんて聞かれたのに『家の用事で行けない』と答えた……実は家の手伝いで出店側として参加していたのだ、家の用事は本当だけど、ウソをついていた訳で……その理由は――。

 私がぐるぐると考えていると場地くんが口を開く。

「まあいい、俺も出店側居るから」
「え? そうなの?」
「ほら斜め向こうの屋台あんだろ?」

 場地くんの指差す方向には、射的やヨーヨーすくいがある、お祭り競技三本勝負と書かれたお店があった。

「あ、本当だ」
「まあ俺は店番終わってマイキー達と花火見にいくけどな、お前も来いよ」
「え、私も!?」
「時間ねえか?」

 全然時間はある、あるんだけど……私が口ごもっていると。

「はーい、うちの子いつでも連れ出してあげて! 大歓迎よ!」

と母親が勝手に私の肩を持ちながら、場地くんにウィンクしていた。

「お母さん!? そんな勝手に」
「だってぇ、こんなかっこいい子に誘ってもらってるの知ってたら手伝いなんてさせなかったわよ?」

 母親はため息をつきながら私の肩をぶんぶんと揺らす。

「ありがとうございます! んじゃ、行くぞ!」

 場地くんは私の腕を掴み歩き出そうとする。

「ちょ、待って、髪の毛とか……いろいろあるし5分、いや3分待って!」
「しょうがねえな、3分間待ってやる」

 どこかの名作アニメで聞いたような悪役のセリフを場地くんは言った。

「5分は待ってくれないんだ……」
「お前が3分っていうからだろ」

 こんなたわいもない会話をしてる間にも時間は過ぎていく。
私は慌てて屋台の裏手でバッグから取り出した手鏡と汗拭きシートを使って最低限の身だしなみを整えた。

、あんまり遅くならないようにね?お父さん心配しちゃうから」
「うん、わかった」

 お父さんは無言でずっとたこ焼きを焼きまくっていると思っていたが、私の様子をチラチラと見ていたらしい。

「もうお父さん、そんなに心配?うちの娘は彼氏の一人くらいいてもいい年頃よ」

 母はお父さんの背中を強めに叩くと、お父さんはたこ焼きを落としそうになっていた。うーん、ちょっと気まずい、別に彼氏とかじゃないし……。

「……それじゃ、ちょっと行ってくるね」
「行ってらっしゃい! あっ場地くん、うちのをお願いね!」
「うす! 時間には間に合うようにします!」

 場地くんは私のお母さんに元気よく返事をしてくれる、場地くんってなんだかんだで礼儀正しいんだよな、と感心しながら私は場地くんと歩き出す。

「あ、お父さんの事気にしないでね? 私が男子とお祭り行くだけで落ち込んでるだけだから」

 本当お父さんって心配性っていうか若干過保護だよね、まあ感謝しているけどさ。

「いや、まあ、お前の家族ってなんか感じいいよな、結構好きだわ」
「そ、そっか……」

 家族の事褒められると何だかこそばゆい気持ちになり、つい下を向いて歩いてしまう。

「まだ花火まで時間あるな、なんか食いたいもんとかあるか?」

 場地くんが私の顔を覗き込むように聞いてきた。

「んーりんご飴食べたいかな? あ、あと焼きそばも食べたい!」
「食い意地張りすぎじゃねえか?」
「だってずっと屋台忙しかったんだよ? お腹空いたよ~」
「仕方ねえな、じゃああっちの屋台行くか」
「うん! あ、お金はちゃんと持ってきてるから大丈夫だよ」

 私は自分の財布をカバンから取り出した。

「バカかお前は、こういう時は黙って奢られとけよ」
「ええ、場地くんいつも金欠って言ってたのに?」
「店番の臨時収入が入ったからな、屋台のメシぐらい奢らせろ」

 場地くんは私に得意げな顔をしながら屋台の方に歩いてりんご飴と焼きそばを買ってくれた。

「ほい、りんご飴と焼きそば」
「ありがとう! 屋台と言えばりんご飴と焼きそばだよね!」
「まあ定番だよな、りんご飴は分かんねえけど焼きそばは好きだぜ」
「ペヤングの焼きそばより?」
「お前……それとこれとは比べるもんじゃねえだろ、それぞれの良さってもんがあんだよ」

 ちょっとムキになってる場地くんを見ると何だかおもしろくて笑ってしまう。
私は場地くんとのこういうやり取りが嫌いじゃない。

「あはは、ごめんごめん、じゃありんご飴いただきます」

 もらったりんご飴をパクッと口に含んだ。甘さと酸味が口に広がる。

「おいしい!んー、この味はこの時期にしか食べれないからね、本当ありがとね! あ、一口食べる?」

 私は場地くんにりんご飴を差し出す、そんな私を見て場地くんは眉を寄せる。

「……、おまえわざとやってる?」
「え? あー……そういうつもりじゃなくて、ただ買ってもらったから」

 自分から大胆な事をしてしまったことに気づき顔が熱くなってくる。

「まあ、俺は別に甘いもんそんなに好きでもねえから、後で焼きそば貰うわ」
「う、うん!」

 何だか恥ずかしくなって目の前にあるりんご飴を無心で食べながら歩く。
少し目線を上にあげると場地くんが私を見ていた。

「な、何? どうしたの?」
「いや、お前、何で祭り行かねえなんて言ったんだよ」
「それは……」

 私達が歩いている横を小走りで抜けて行く色とりどりの浴衣の女の子たちの姿が目に入った、彼女たちを見つめながら私は口を開く。

「今日の私の恰好、甚平着てるでしょ?」

 屋台の手伝いの為に動きやすい恰好をと思ってこの甚平を着ている、この格好を気に入ってはいるが場地くんに会うとなると話が別だ。

「ああ、俺も今日甚平だから一緒だな!」
「な、そう言う事さらっと言わないでよ!」
「ん?何でだよ?」
「何でって言われても……ってか場地くんの甚平姿はかっこいいからいいじゃん!!」
「な、いきなりなんだよ、照れんだろ!」

 場地くんはそう言って顔を赤くしながら視線を逸らす。

「……だから、今日の私は甚平だし、汗だって気になるし……そういう姿を場地くんに見せたくなかったの……浴衣を着てもっとメイクとかした姿で会いたかった」

 そう言っている自分が恥ずかしくて顔を両手で覆う、場地くんはため息をついて私に視線を向ける。

「お前さ……バカじゃねえの?」
「た、確かにバカかもしれないけど……何もそこまで……」
「お前がどんな格好でも俺は気にしねえっつーか、結構甚平姿良いなって思ったっつーか……いや、なんだ、その」

 場地くんが頭を掻きながら何か言いたげにしているがうまく言葉に出来ないのか、うーんと唸っている。

「えーっと……つまりだな……俺は汗かきながら屋台手伝ってるお前かっけえなって」
「……へ? かっこいいの? わたし?」
「ああ、俺はお前のかっけえとこ結構好きだぜ」

 かっこいいだなんてはじめて言われたかも……嬉しいけど。

「ふっ、女子に向かって言うセリフにしてはカッコいいはちょっと……」
「あ? ダメか?」
「ううん、ダメじゃないよ、凄く嬉しい」
「ん、じゃあこれからは俺に変な嘘とかつくなよ、俺だって普通に傷つくしよ」

 私は自分の事ばかり考えてたな、今度からはもっと相手の事を考えないと。

「うん、わかった…もう嘘つかないよ、ごめん」
「約束な?」
「うん……約束する」
「よし、じゃあ花火始まっちまうから行こうぜ!」

 場地くんは手を私に向けて差し出す、これはつまり……。

「えっと、手を繋ぐってこと?」
「おう、人多いしはぐれたら大変だろ」
「マイキー君達にからかわれちゃうかもよ?」
「勝手に言わせとけよ、ほら、嘘ついた罰とでも思っとけ!」

 場地くんは私の手を強引に掴む。こんなの全然罰になんないよ場地くん……私の鼓動、手から伝わってしまわないかと不安になるくらいドキドキしてしまう。

 マイキー君達との待ち合わせ場所である神社の境内の方へ向かい歩く、その途中で花火が打ち上がる音が聞こえる。
「あっ! 場地くん、もう始まっちゃったよ!」
「ああ、まあそんな慌てなくても大丈夫だろ、少し歩けば着くし」

 場地くんは焦らず打ちあがる花火を見ながらゆっくり歩いてくれた、マイキー君達と約束していた場所はもうすぐそこだ。

「ねえ、来年は私がお祭り誘っていい?」
「なんだそれ」
「だって今年誘ってくれたし、だから来年は私から誘おうかなって」

 私がそう言うと場地くんは笑うのをごまかそうと口を手で覆っている。

「ちょ、何で笑うの?」
「いや、変なとこ真面目というか、律儀なとこあるなって思ってよ」
「そうかな? でもいいでしょ?私から誘っても」
「駄目だ」
「え?」
「俺が誘ってやるから、来年も再来年も……」

 場地くんはそう言うと私の手をぎゅっと握り返してくれる。
来年も再来年も場地くんに夏祭りに誘ってもらえるんだ、なんだかそれってもう……いや、自惚れすぎちゃダメだ。

「うん、じゃあその時はもっと気合い入れた格好するね!」
「ああ、楽しみにしといてやるよ」

 場地くんは呆れたように笑う、来年こそは少しは可愛いって思ってもらいたい……なんて少しよこしまな考えをしてしまう。

「あっ! いたいた!」
「二人ともおせーぞ」

 神社の入り口の階段付近では、私達を見つけるなり手を振っているエマちゃんとドラケン君がいた。

「行こうぜ
「うん!」

 そうして、私と場地くんは皆の所へ向かった。


(場地視点)

「だからさあ、今度の祭りにはぜってえ女子と行きたいわけよ!」
「いや、お前デート誘える女子とかいんのかよ!」

 クラスの奴らの会話が聞こえてくる、夏休み前に浮かれてるクラスの七氏くんは祭りという一大イベントにかこつけて女とデートしたいみたいだ。

 俺はそんなクラスの浮かれた雰囲気とは違って、学期末のテストを乗り越えなければ俺に夏休みなんて来ない。だからこうして教師のいないHRも机に向かい、楽し気に騒いでいる七氏くん達の声を背にしながら勉強を続けていた。

「だから、隣のクラスのさんとかと行けたらなあ……なんて思ってるわけよ! 分かる?」

…………は?? 聞き捨てならねえ名前が聞こえ俺は思わず鉛筆を折ってしまった。いや、聞き間違えかもしんねえよな?とにかく勉強を続けよう……。

「あー、さんか、優しいもんな」
「そうなんだよ! 俺が委員会の時プリント忘れたのもすぐ気づいてくれてさ!」
「単純だなー、まあ結構可愛いしな!」
「だろ? 俺にしか分からない魅力がさんにはあるわけよ!」

……聞き間違いじゃなかった、ってモテるのか?つかなんだよ「俺にしか分からない魅力~」って、俺だってあいつの良いところぐらい知ってるっつーの。

「……っと、いけね!」

 気づけばノートまでぐしゃぐしゃにしてしまっていたので急いでノートのしわを伸ばした、この状況はやばい……勉強が手につかねえ……。

 俺は放課後になると教科書とノートを鞄に放り込み、早足で教室を出た。

「あいつ…………」

は放課後は大抵、人が来ない図書室にいるはずだ、そこに向かおうと廊下を早足で歩いていると千冬と会った。

「場地さん!今日はテスト勉強しないんスか?」
「いや、それは後でやろうと……それよりは?」
ちゃんっスか? 今日、日直だから職員室に日誌渡しに行きましたよ!カバンも……置いてますね。すぐこっち戻って来るんじゃねえスか?」

千冬はのいるクラスの教室を覗きカバンがあることを教えてくれる。

「そうか……つか千冬ぅ、ってあれか、結構モテんのか?」

千冬はと小学生の頃から知っているからつい聞いてしまった。

「は? いきなりどうしたんスか?? まあ……ちゃん意外と男子から人気あるんじゃないスかね」
「ああ!?ってモテるのか!?」

 俺は思わず大声を出してしまった。千冬はそんな俺を見て驚いている。

「あ……いや、結構良い奴ですし、一般的にかわいい?部類っていうか」
「お前、のこと可愛いと思ってんのか!?」

千冬の肩を掴む。だがそんな俺の様子を見て千冬は否定するように手をブンブン振る。

「ちょっと落ち着いて下さいよ! 俺は別にちゃんのこと好きとかじゃないッスからね!! あんなめんどくさい奴!」
「はあ? 誰がめんどくさい奴だ! 結構素直で可愛いだろうが!」

 ふと我に返ると、自分のやったことの恥ずかしさが一気に襲ってくる、千冬もぽかんとしていた。

「あ……いや……忘れてくれ今のは」
「いや、まあ、忘れたことにしておくッスけど……何かあったんスか?」

 千冬が心配そうな顔をして聞いてくる。

「……いや、何でもねえ、これは俺がはっきりあいつに言わねえといけねえからな」

 七氏に祭り誘うのを先越されるのだけは俺のプライドが許さない。 そんなことを思っていると千冬は

「え!? もう腹括ったんスか!……よくわかんねーけど、とにかく応援します!」

そう言ってニッと笑って親指を立てている、なんか勘違いされている気もするが、細かいことは気にしねえ。

「おう、ありがとな」

 俺も親指を立て返した。

「あれ? 二人とも今日は教室でテスト勉強しないの?」
がいきなり後ろから話しかけてきた。
「おわっ!? !いきなり背後に立つなよ……」
「ごめんごめん、だって親指なんて立ててなんか二人が熱く語ってたし、邪魔しちゃ悪いと思ってさ」

は笑いながらそう言った、……どこまでこいつは聞いてたんだろうか。

「そうだ、、お前武蔵祭り誰かと行くのか?」
「ええっと…特に誰かと行く予定はないかな?」
「じゃあ、俺と行かね?」

 俺はに言った、は一瞬嬉しそうな顔をしたが直ぐにその表情はしぼんでいった。

「え、えっと……すっごく嬉しいんだけどその……家の用事が……」

は目を逸らして答える。

「用事? そんなに大事なようなのか?」

 俺がそう聞くとはコクリと頷いた。しょんぼりとしたを見てしまうとこれ以上食い下がることは俺にはできなかった。

「仕方ねえな……あ、とにかく変な男に誘われてもついてくんじゃねえぞ!七氏とか!」
「え、なんで七氏くん?? ってか大丈夫だよ……私別に子供じゃないし」

いや、子供だろと喉まで出かかったが、なんとか抑えた。
は自分のカバンを取りに教室に向かっていった。

「あ~~そうかよ!誘っても元々予定あるんじゃ仕方ねえよな!」

 俺は振り返り千冬に声を掛ける。

「いや、てっきり俺は告白でもするのかと思ってたもんで」

 頭を掻きながら千冬はそう話す。

「あ? こ、告白だ?! なんでだよ!」

俺がそう言うと千冬はため息をつく。

「いや、まあ……場地さんがそれでいいならいいッス」

 そう言って千冬は肩をすくめる。俺は納得がいかずイライラしたが、千冬に言い返す言葉が浮かばなかった。

***

「えっと…たこ焼き2パックの注文ですね?」
「おう、つーか、他に何か言う事ねえのか?」

 がやがやと賑わっているお祭り会場ではたこ焼きを売っていた……なんだよ、ウソついてたのかよ!

「えーっと、久しぶりだね?」
「ちげえよ!いや、まあ久しぶりだけど お前、祭りいかねえって言ってたくせに居るじゃねえか!」
「それは、その……」

 言葉を詰まらせる、家の手伝いってことは本当だろうし、なんとなくが俺の誘い断った理由も察しがついた。どうせ、家族の手伝いを断ってまでは俺と遊べないとかそんな感じだろうな。

「まあいい、俺も出店側居るから」
「え? そうなの?」
「ほら斜め向こうの屋台あんだろ?お祭り競技三本勝負っての」
「あ、ホントだ」

 俺はおふくろと一緒に出店をしている方へと指をさす。 は屋台側から上手く見えなかったのかこっちにまで出てきて斜め向こうの屋台を確認した。
屋台の方を確認しているの姿を見る、紺色の甚平を着ているは制服の時とは違った雰囲気で新鮮だ。多少の違いはあるが俺も紺色の甚平を着ている、なんつーか、おそろいみたいだな。


「まあ俺は店番終わってマイキー達と花火見にいくけどな、お前も来いよ」
「え、私も!?」
「時間ねえか?」

 俺もなかなかにしつこい事をしているとは思う、らしくねえなって自分でも思う。でも、こいつもこいつで珍しく歯切れの悪い様子なのでどうしても気になっちまってる部分がある。
じっとの言葉を待っていると……

「はーい、うちの子いつでも連れ出してあげて! 大歓迎よ!」

の肩を持って現れたのはの母ちゃんだった。
は驚いていたが次々にを丸め込んでいき、結局は出店の手伝いを早めに切り上げて俺と一緒に花火を見に行く事になった。

「ありがとうございます! んじゃ、行くぞ!」
「ちょ、待って、髪の毛とか……いろいろあるし5分、いや3分待って!」
「しょうがねえな、3分間待ってやる」
「5分は待ってくれないんだ……」
「お前が3分っていうからだろ」

 はあわてて屋台の裏手で髪の毛をセットしている。じろじろ見てはいけないと分かっているが、どうしても気になってしまい横目で見てしまう。準備してるのを待つのはなんだかこそばゆく感じる、でも何故か悪い気はしねえな……。

「お待たせ!」
「よし、じゃあいくか」

の母親に挨拶をする。親父さんにも挨拶をしたかったが心ここにあらず……という感じだったのでそのまま屋台を後にした。

「あ、お父さんの事気にしないでね? 私が男子とお祭り行くだけで落ち込んでるだけだから」

は笑いながら言う。俺としてはそれはそれでいいのか?と思うがが笑ってるなら別にいいか。

「いや、まあ、お前の家族ってなんか感じいいよな、結構好きだわ」「そ、そっか……」

 花火を見るまでにはまだ時間があるのでと屋台に行く、するとは自分で財布を出そうとしていた。

「バカかお前は、こういう時は黙って奢られとけよ」
「ええ、場地くんいつも金欠って言ってたのに?」

 確かにいつも俺は金欠だが今日は違う。

「店番の臨時収入が入ったからな、屋台のメシぐらい奢らせろ」

の事だから申し訳ないとか思っちまうんだろうけどたまにはカッコつけさしてくれ。
を遮り屋台に向かい買いたがっていたりんご飴と焼きそばを買って渡す。

「ほい、りんご飴と焼きそば」
「ありがとう! 屋台と言えばりんご飴と焼きそばだよね!」

がりんご飴と焼きそばを持って嬉しそうにはしゃいでいる、俺はこいつのこういう顔を見るのが結構好きかもしれねえ。

「まあ定番だよな、りんご飴は分かんねえけど焼きそばは好きだぜ」
「ペヤングのやきそばより?」

 こいつ俺にその究極の選択をさせる気か?ペヤングはあの甘すぎず辛すぎないソースのジャンクな味が最高に美味いんだよな、でも屋台の焼きそばも好きだパリッと香ばしい焼き加減の麺がソースに絡まって……くそっどっちかなんて選べねえ!

「お前……それとこれとは比べるもんじゃねえだろ、それぞれの良さってもんがあんだよ」

 俺がそう答えるとはいたずらっぽく笑った。なんつーか、こいつってたまーにちょっと意地悪なとこあるんだよなあ……別に嫌じゃねえけど。

「あはは、ごめんごめん、じゃありんご飴いただきます」

はりんご飴を食べる。

「おいしい! んー、この味はこの時期にしか食べれないからね、本当ありがとね!」

 はニコニコと満面の笑みでりんご飴を食べている、こいつ本当に美味そうに食うな、ふとが食べているのを止めて俺を見る。


「あ、一口食べる?」

 はりんご飴を俺の方に向けりんご飴を差し出した。
こいつ……これはわざとなのか!?

「……、おまえわざとやってんのか?」
「え? あっ、そういうつもりじゃなくて……ただ買ってもらったからで」

みるみる顔が赤くなっていく、なんだよさっきまでの余裕そうな表情どこいったんだよ。

「まあ、俺は別に甘いもんそんなに好きでもねえから、後で焼きそば貰うわ」
「う、うん!」

 は焦ったように目の前のりんご飴を食べている。
あー、一口貰えばよかったか?でも付き合ってるわけじゃねえしなあ……。
の食べっぷりをぼーっと見ながら考える……って俺の事嫌いじゃねえよな? つか結構好かれてる方だと思う。……それなのに、あいつは祭り行かねえなんて嘘つきやがって、俺に理由を直接言えばよかったじゃねえかよ。

「な、何? どうしたの?」

 はじっと見ている俺に気づき聞いてくる。

「いや、お前、何で祭り行かねえなんて言ったんだよ」

 あー結局直接聞いちまった、は「それは……」と、何か言いたそうに口ごもる。

「……今日の私の恰好、甚平着てるでしょ?」
「ああ、俺も今日甚平だから一緒だな!」 
「な、そう言う事さらっと言うのホントずるい……」
「ん? 何でだよ?」

 何がずるいんだよ、同じような格好してるの割といいなって思ってたけどダメだったか?

「何でって言われても……ってか場地くんの甚平姿はかっこいいからいいじゃん!!」
「な、いきなりなんだよ、照れんだろ!」

 はりんご飴を差し出してきたり、かっこいいとか普段は言わねえ事言いやがって、お前こそずるくね?

「……だから、今日の私は甚平だし、汗だって気になるし……そういう姿を場地くんに見せたくなかったの ……浴衣を着てもっとメイクとかした姿で会いたかった」

 ……は?こいつ何言ってやがんだよ、俺の前では完璧な姿で会いたかったってことだよな?それってこいつは結構俺の事を嫌いじゃねえってことだよな?は顔を赤くしながら下を向いている。そんな顔すんなよ、俺まで恥ずかしくなるだろうが、どう声掛けようか俺の頭ン中はおかしくなっていた。

「お前さ……バカじゃねえの?」
「うっ、確かにバカかもしれないけど……」
「お前がどんな格好でも俺は気にしねえっつーか、結構甚平姿良いなって思ったっつーか……いや、なんだ、その」

 そりゃ俺だっての浴衣姿は見てみたかったけど、別に甚平姿だって良いと思うし……つーかそういう問題じゃなくて……
あー!頭が回らねえ。とにかくそのまま思ったこと言うしかねえ!!

「えーっと、つまりだな、俺は汗かきながら屋台手伝ってるお前かっけえなって」
「へ? かっこいいの? わたし?」

 は驚いた顔をしながら俺を見ている。
何言ってんだ俺……でも実際屋台で頑張ってるとか見てるとかっけえなって、
やっぱこいつ良いよなって思っちまったし。

「ああ、俺はお前のかっけえとこ結構好きだぜ」

 俺はやけくそにそう言ってしまう、を見ると少し笑っていた。

「ふっ、女子に向かって言うセリフにしてはかっこいいはちょっと……」
「あ? ダメか?」
「ううん、ダメじゃないよ、凄く嬉しい」

 仕方ねえだろ、かわいいって言うのはなんか痒い、何ならいつも思って……いや、まあ、が嬉しいって言ってくれて俺はホッとした。

「ん、じゃあこれからは俺に変な嘘とかつくなよ、俺だって普通に傷つくしよ」

 には俺の前では完璧とか可愛いとかそんな風に取り繕って欲しくねえし、必要もねえんだよ。 わかってねえだろうけど俺は結構の言葉とかしぐさとかで嬉しかったりムカついたりするときがあんだよ、こんなこと言えねえけど。

「うん、わかった、もう嘘つかないよ、ごめん」
「約束な?」
「うん……約束する」

 まるで小さい子供に言い聞かせるような約束をする、そして俺はに手を差し出した。
「よし、じゃあ花火始まっちまうから行こうぜ!」
「えっと、手を繋ぐってこと?」
「おう、人多いしはぐれたら大変だろ」
「マイキーくん達にからかわれちゃうかもよ?」
「勝手に言わせとけよ、ほら、嘘ついた罰とでも思っとけ!」

 は少し戸惑っていたようだが、俺は強引にの手を掴んだ、今日ぐらい良いだろ別に。 気づいたらもう花火は始まっていた、祭りの賑わいが一気に増す。

「あっ! 場地くん、もう始まっちゃったよ!」
「ああ、まあそんな慌てなくても大丈夫だろ、少し歩けば着くし」
「そっか」

 そりゃあもっと早く待ち合わせ場所に着こうと思ったら早歩きすりゃいいかもしれねえけど、こうやって二人で花火見ながら歩くのも悪くねえと思う。
そんなことを思っているとは突拍子もない事を言ってきた。

「ねえ、来年は私がお祭り誘っていい?」
「なんだそれ」
「だって今年誘ってくれたし、だから来年は私から誘おうかなって」

 こいつほんと……一周まわってバカなのか? は真面目に言ってんだろうけど俺は笑いをこらえた。

「ちょっと、何で笑うの?」
「いや、変なとこ真面目というか、律儀なとこあるなって思ってよ」
「そうかな? でもいいでしょ? 私から誘っても」
「駄目だ」
「え?」

 駄目だろ、こういうのはやっぱり俺から誘わせてほしい。

「俺が誘ってやるから、来年も再来年も……」

そう言いながら俺はの手をより強く握る、あーの顔まともに見れねえ……。

「……じゃあその時はもっと気合い入れた格好する」

 はそう言うと俺の手を握り返す、の顔を覗くと少し顔を赤くしていた。
こいつ俺の気持ちとか気づいてんだか、気づいてねえんだか……。

「ああ、楽しみにしといてやるよ」

と俺はため息交じりにそう答える。そうこうしてるうちに「あっ! いたいた!」とエマの声が聞こえその隣にはドラケンもいた。

「ほら行くぞ」「うん」

 まあ、来年はの浴衣姿が見れることは確定したわけだし……楽しみが増えたと思っておくか。そんなことを思いながら俺はの手を引いてその場に向かった。

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